PENYA F.C.BARCELONA JAPAN

第9回 ーXavi Tribute...ー

バルサの『哲学』とは何か? それは、理不尽な体制に毅然と立ち向かう姿勢、権力には屈しないというカタラン魂であり それをフットボールで、しっかりと体現しよう、対極にあるマドリッドとは違うのだ、と言うのが『哲学』だ
ティキ・タカという言葉が使われるようになったのは何時ごろからだろうか。2010年にスペインがW杯を獲り、 その翌年にバルサが2011年にWEMBLEYでCLを制した時あたりか。いずれにしても主役はいつもXaviだった。
気持ちの良い程にボールが回った。時々、もうシュート打ったら!とじれったい時すらあった。
ロンドンに住んでいた時はプレミアを良く観に行ったが、今だにバックラインでボールを奪うとすぐに、『GO ON!』という声が バックスタンドから鳴る。まどろっこしい繋ぎはいらないから前線にぶち込め!という声。観ている層がそういうフットボールを 求めているからかパブでビールを浴びるほど飲んで、仕事のうっ憤発散の場である人たちには繋ぎなんぞ不要。豪快なゴールが観たいのだ、と。
スペインは違う。特にクレはそんなフットボールは求めていない。バルサのフットボールは時々チェスや将棋に例えられるが、 そういうじっと見入るフットボールを観たいと思っている。カンプノウに行ったことのある人ならわかると思うが、 観戦マナーは極めて良いし、試合中、立ちっぱなし、歌いっぱなしの応援は絶対にしない。すれば睨まれるし、やかましいと言われる。
必要な時に歌い、拍手し、野次る。クレもプロだ。 だから、ティキ・タカを好み、あれをバルサスタイルの完成形と言い始めた。
しかし、ティキ・タカは一つのスタイルではあっても、完成形ではないし、バルサの『哲学』とまで言うのは、少し次元が違う。
メディアはLuis-Enriqueに変わってからティキ・タカスタイルが崩れ始めた、すなわち哲学が崩れ始めた、と厳しかった。
日本のメディアもそういう論調のところが随分とあった。さて、三冠を獲った今、これがどう豹変するのか、楽しみだ。 
個人的に整理するとこうだ。。。
まず、1899年の創立以来の唯一、一貫する思想、それは Anti-Madridisimo!この一言だけ。
しかし、これを『哲学』と表現するのは正しくないし、あまりに大人げない。それではどこかの政治団体と同じ。
ではバルサの『哲学』とは何か? それは、理不尽な体制に毅然と立ち向かう姿勢、権力には屈しないというカタラン魂であり それをフットボールで、しっかりと体現しよう、対極にあるマドリッドとは違うのだ、と言うのが『哲学』だ。

Madridが世界中のスターをかき集めるのなら、こちらはカンテラで勝負!出来モノを買うんじゃなくてしっかりと育てる! 
その為には育成システムが必要だ。基本はCruyffが持ち込んだAjaxシステム。これを更にカタラン風に進化させる。ロンド。
このボール回しゲームを延々と繰り返し練習し、しっかりとした個人技と戦術眼を身に着ける。バルサのフットボールは金太郎飴で どの世代でも同じスタイルで戦う。だから、突如として下位組織から抜擢されてもすぐになじめる。
この考え方こそがバルサの『哲学』だ。ティキ・タカそのものではない。
PEPの時代、運命の巡り合わせによりXavi, IniestaそしてMessiという逸材が同じ時代に揃った。彼ら3人だけではなく、 同じようにカンテラで育ったタレントたちが揃った。戦略オタクのPEPはこのタレントを最大限に活かすシステムは何かと考える。
結果、Xaviを中心とした究極のボール回しスタイルの、ティキ・タカという形でアウトプットした。

そしてLuis Enriqueが来る。自身はカタラン人ではないけれど、マドリとバルサ両チームでプレーし両側を知り尽くしたうえで、 反骨精神旺盛なこのファイターは、最終的にバルサ人、そしてクレである事を選んだ。
当然Luis nriqueも先記したバルサの『哲学』は十分に理解している。そして、自身監督を受ける際に、間違いなく一つの事実を 受け入れなければならなかった。 それはXavi の年齢という問題。
このバルサの申し子のような選手も早晩リタイアする時期が来る。だからPEPと同じ事は繰り返せない。
であれば、ティキ・タカの主役であるXAVIのいないシステムをいち早く構築する必要がある。
哲学は絶対に変えないし、ポゼッションスタイルも必ず活かす。そう決めて監督を受け入れたのではないか。私はそう考えている。 監督として、持ち駒に合わせた応用編で戦術が変わるのは当然あり。Xaviの退団を見据えてティキタカをそのまま貫くのだはなく、 Neymar, Suarezらが加わった新しいスタイルがあっても良い。カウンターは決して逆行戦術ではなくて、スピードと高い技術が 合わさった武器として加わえる。全然ありだ。

Xaviには随分と楽しませてもらった。本当に感謝の言葉しかない。自分のワンコにXaviという名前を付けるほど、Xaviの プレーが大好きで、個人的にはティキ・タカゲームをずっと観ていたかった方だ。が、フットボールを長い歴史絵巻として 追いかけると、Xaviという主役が舞台から退き、長編大河ドラマが次の展開に移っていくのも、これまた時代の流れだ。
だから、私はそういう目でバルサを観ていきたい。
3冠を獲った今、Xaviのいない新しいバルサの歴史が始まる。そして私は、いつの時代の物語もサポートしたいと思っている。
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